中日新聞
 “感動!!最前線 インタビュー静岡

中日新聞 平成11年5月16日付
朝刊20面 県内版掲載







 「ミッドナイト・ホモサピエンス」で文藝賞を受賞している
 作家、渥美饒兒さん(四五)=浜松市佐鳴台=がつい最近、
 初の「社会派長編小説」を書き終えた。
 社会の暗部をえぐるミステリー色濃い小説。純文学から
 文壇にデビューして16年目になる渥美さんにとって
 「新境地」を開く作品になりそうだ。作家と特殊法人の
 管理職という二つの顔を持つ渥美さんに、表現者として
 幅を広げる新作への手ごたえなどを聞いた。
     (聞き手=報道部・田所定信)


 −インタビュー内容−


―社会派小説を手掛けたそうですね。

  毎回、違うものを書いてきたんでね。デビューの「ミッドナイト」は純文学、
次の「ジョン―」はエッセー、次いでモデル小説。今度はミステリーにも踏み込
んだ小説。ここまで広げると怖いものがなくなるんだけど(笑い)。しかし、
どこかで純文学を引きずっているから失敗しちゃう。この原稿、書き直しに1年ぐ
らいかかるかもしれない。

―純文学を引きずるとは。

  内面を掘り下げるのはいいとしても純文学には表現方法などの違いがあり、
どうしてもインパクトが与えづらい。今度は思い切って世の中の構造に寄り添い、
暗部をえぐり出す小説にしてみた。
《前作の北村透谷を描いたモデル小説「孤蝶の夢」を出版して、間もなく神戸少
年連続児童殺傷事件など、新時代の到来を予感される事件が起きた》

―想像を上回る異様な事件でした。
 前作の出版記念パーティーの後、編集者から「これで終わりじゃない。
書きまくれよ」といわれてね、前から小説の構想はあったし取材にとりかかりました。
文藝賞の授賞式で編集者から「君は取材、資料を基に物語を構築するのに
たけている」と言われたことも社会派小説を書くきっかけにはなった。
《「ミッドナイト」は動物園の飼育係を主人公に、動物の立場から人間中心主義
を告発した作品だった》

―文学の現状をどう見ますか。
 子供たちが学校で「キレタ」と言ってナイフで先生を刺す現実に変わっていな
がら、文学の内実は変わっていない。表現者は社会性を描かないと変革への力に
はなり得ないですよ。時代の指針を示すべきです。

―新作のさわりだけでも。
 題名はまだ公表できません(笑い)が、ミカン農家と御前崎などを取材しまし
たね。なぞめいた事故で妹を失った主人公が真相を究明するうち巨大企業、中央
政界の暗部に巻き込まれていく物語です。最終的には千枚程度に圧縮するつもり。

―バブルが崩壊し社会の至る所で日本人が漂流していますが。
 僕自身もある意味でそうかなと…。「ミッドナイト」で提起した問題が現実に
なったと複雑な心境です。しかしいまは、生き方が問われる一番いい時期。
ここらで泥沼にくさびを打ち込まないと…。時代の指針をこの小説で示したいです
ね。出版は来年になりそうです。

中日新聞 平成11年5月16日付 朝刊20面 県内版
感動!!最前線 インタビュー静岡掲載』より