−静岡新聞1月15日付−

静岡新聞掲載記事
−掲載内容−

1984年に「ミッドナイト・ホモサピエンス」で第21回文藝賞を受賞した作家渥美饒兒さん(47)=浜松市佐鳴台4丁目=の5年ぶりの新作「ジャパン・シンドローム」(作品社)が15日全国一斉に発売される。原発建設に絡む産官の癒着を軸に据え、新興宗教の在り方、警察組織の構造的な限界など、現代社会のさまざまな側面をえぐった社会派ミステリー。舞台を本県と東京都に据え、地方と中央政界を結ぶ緊密な利権構造を描いた。

  デビュー作の「ミッドナイト・ホモサピエンス」から一貫して純文学作品を書いてきた渥美さんにとって、ミステリーは初めての試み。構想から3年半かけて4日に脱稿したばかりという新作は、「苦しみながらぜい肉(余分な文章)をそぎ落とし、本当に書きたい現代日本の病理だけを浮かび上がらせた」長編小説という。
物語は、東名高速の三ヶ日インター付近で多重交通事故を起こして志望した妹の行動に不審を抱いた主人公が、地元新聞社の記者と共に調査を進め、小さな事故の陰に隠された大がかりな組織工作を暴く―という内容。地元原発の放射能漏れ事故がすべての始まりだったことと、事故の全容解明が日本の存続構造を根底から覆す力を秘めていることなどから、原発用語「チャイナシンドローム(炉心融解)」にかけて「ジャパン・シンドローム」というタイトルにした。渥美さんは「文学の中で追求してきた『人間の文明とは何か』という問いを、ミステリーの分野で形にできた」と話している。「ジャパン―」は340ページ、2,200円。また、出版記念パーティーが浜松市田町のハートランドで開かれる。ゲストは第三回三島賞を受賞した作家の久間十義氏。会費は本代込みで5,000円。

静岡新聞 平成13年1月15日付朝刊 県内版掲載』より